ボツリヌス(ボトックス®)治療
ジストニアとボツリヌス(ボトックス®)治療
眼瞼痙攣や痙性斜頸は、自身の意思とは無関係に、勝手に筋肉が収縮するために起きる病気です。
これらは、専門的にはジストニアという種類の運動異常に分類されています。
この、ジストニアの原因は不明な点が多く、明確な治療法がありませんでしたが、ボツリヌス・トキシンを注射することで症状を軽くすることができるようになりました。
ボツリヌス(ボトックス®)治療について
日本では1980年代後半から臨床試験が始まり、1997年4月に眼瞼痙攣に対してのボツリヌス治療が認可されました。
それに引き続き、片側顔面痙攣、痙性斜頸、上肢痙縮・下肢痙縮とその適応範囲が拡大しています。
これらの病気に共通していることは、特定の筋肉が意思とは関係なく収縮したり、過剰に緊張したりしているということです。
片側顔面痙攣、上肢痙縮・下肢痙縮はジストニアには分類されませんが、筋肉の収縮が過剰になっているという点では似通った病態と言えます。
このように過剰に収縮している筋肉がどの筋肉か容易に同定できる場合には、その筋肉にボツリヌス・トキシンを注入すると収縮が軽くなります。
つまり、眼瞼痙攣ではまぶたに、痙性斜頸では首の筋肉にボツリヌス・トキシンを注射します。
注射薬の効果は注射後2~5日程度で現れ始め、通常3~4ヶ月持続します。 そのため、年に3~4回の注射を繰り返していくことになります。
ボツリヌス(ボトックス®)治療を行う医師の資格について
ボツリヌス・トキシンは特別な講習や実技セミナーを受けた専門医師のみが注射できる仕組みになっています。
熟練した医師が最適な注射部位を同定し、適量を適切に注射します。
顔面に注射する場合は極めて細い注射針を用いますので、ほとんど出血もありません。
ボツリヌス(ボトックス®)治療の副作用について
ボツリヌス治療の副作用としてはアレルギーや皮下出血などが挙げられますが、最も頻度が高いのは薬の「効き過ぎ」です。
つまり、注射した筋肉の筋力が弱くなりすぎて、目や口が閉じにくくなったり首が重く感じたりすることです。
特に目が閉じにくくなると眼球が乾燥し、結膜炎や角膜炎を生じる可能性がありますので、目薬や眼帯が必要になることもあります。
いずれの副作用も注射後、約1ヶ月程度で消失し、永続することはありません。
薬の効果には個人差があるため、特に1回目の注射は効果が不十分であったり効き過ぎたりする可能性が高くなります。
2回目以降は1回目の状況をふまえ、投与量や投与部位を調節しますので、より効果が上がります。
当院における治療
当院では、豊富な経験をもとに患者様個々の症状に合わせて、ボツリヌス治療を行っております。
表面からは同定困難な深部筋が関与している場合などでは、必要に応じて筋電図を用いて過剰に収縮する筋肉を正確に同定しております。
また、患者様の希望や病状により内服薬による治療や生活指導なども行っておりますので、顔面・頸部・四肢が勝手に動いたりこわばって動きづらくなったりしている方は、ボツリヌス治療の適応か否かにかかわらず、お気軽にご相談ください。
なお、外科的な治療(上眼瞼挙上術・微小血管減圧術・脳深部刺激・選択的末梢神経縮小術など)が最適と判断される場合があります。
その場合には、十分なご説明の上で、手術可能な連携医療機関へのご紹介なども行います。