痙性斜頸
痙性斜頸について
痙性斜頸とは
痙性斜頸(けいせいしゃけい)は、首や肩の周囲の筋肉が意思とは関係なく収縮し、それによって頭、首、肩などが不自然な姿勢を示してしまう病気です。その多くは明らかな原因がなく発症しますが、脳性まひや抗精神病薬などによって起こる痙性斜頸も知られています。首曲がり症・首下がり症などと表現されるものには、頸椎の変形や筋肉の短縮によるものもありますので、首の姿勢が曲がっているものすべてが痙性斜頸というわけではありません。
その多くは明らかな原因がなく発症しますが、脳性まひや向精神薬などによって起こる痙性斜頸も知られています。
原因としては、脳の内部にある姿勢を維持するためのシステムが機能的な障害を起こすことと考えられていますが、なぜ障害を来すかについては解明されていません。
不自然な姿勢になってしまうために、患者さん本人が周りの人に対して引け目を感じ、気おくれしてしまうといった心理的な問題を招くケースもあります。
頸椎牽引や整体などのように、無理に正常の姿勢に矯正する治療法を行うと、しばしば重症化しますので注意が必要です。
痙性斜頸の症状
痙性斜頸の患者さんでは、首や肩の周囲の筋肉に強い収縮や緊張を生じており、そのために頭や肩の位置が異常になります。
具体的には、頭が横を向く、頭が横に倒れる、肩が上がる、下あごが突き出る、体が横にねじれるなどの症状であり、多くはこれらのうちいくつかが組み合わさった形で出現します。
首振りなどの異常な動きが生じることもあります。
また、頭の位置がずれたまま固まっていたり、歩く時や精神的ストレスかかったりした時にだけ頭の位置が変化したりというように、患者さんによって症状の現れ方は様々です。
こんな症状はありませんか。
下記のような症状がありましたら、早めに医師に相談しましょう。
(自分の意思とは関係無く)
- 顔が横を向く
- 肩が上がる
- 頭が前後に倒れる
- 頭が振れる
(自分で動かそうとした時に)
- 動かしにくい
- 痛みを感じる
- 違和感を覚える
痙性斜頸の診断までの流れ
痙性斜頸は下記のような流れに沿って、診断が行われます。
- 1.問診
- 上記のような症状を覚えて医療機関を受診すると、まず問診を受けます。家族に同様の症状があるか、職業は何か、症状が初めて出た時のきっかけは何か、以前に頭や首にけがを負った経験があるかどうか、などについて質問がなされます。
- 2.検査
- 経験のある専門の医師が、診察を行います。常に一定の姿勢を取るか、症状が強くなる要因は何かなど、丁寧に診察をしていきます。必要であれば、画像検査(頭部MRIなど)や表面筋電図検査(筋肉の収縮による電気信号を記録する)などを行い、原因診断を確認したり、どの筋肉に強い筋収縮があるかを確認したりします。
- 3.診断
- こうした診察・検査の結果から判断し、痙性斜頸の診断を行います。原因疾患がない場合には、特異的な検査法はありません。治療にあたっては、原因がどの筋肉にあるのか、また症状の重症度はどの程度なのか、などの評価も行っていきます。
痙性斜頸の治療
痙性斜頸の治療法には、ボツリヌス療法、薬物内服治療、および手術療法などがあります。
- ボツリヌス療法
ボツリヌス菌という細菌が作り出すたんぱく質(ボツリヌストキシン)を有効成分とする薬液を緊張している筋肉に直接注射して、首や肩の周りの筋肉の緊張をやわらげる方法です。治療効果は3~4ヶ月持続しますが、徐々に効果が切れてくるため繰り返し治療を受ける必要があります。また、初回に投与できる薬の量は少なめに抑えられており、1回目の治療では、十分な効果が得られないケースも多いです。 計画的に治療を繰り返していくうちに、症状の軽減を図っていきます。 - 薬物内服療法
筋弛緩薬・抗てんかん薬・抗不安薬などを内服する治療です。 - 手術療法
緊張している筋肉を支配する神経を一部切断したり、脳の深部に電極を挿入し電気刺激したりといった手術を行う治療です。体内にポンプを埋め込み、けいれんを抑える薬を髄液の中に少しずつ注入する方法もあります。 - その他
バイオフィードバック療法という首や肩の位置を正常に保つように訓練する方法を行うことがありますが、単独での治療効果には限界があるため、しばしばボツリヌス療法と並行して行われます。